分子生物学者の福岡伸一さんの「動的平衡」という本にこんなことが書いてあります。
(赤字は引用)
「ハムやソーセージ、弁当などに広範囲に使われているソルビン酸という保存料。これは細菌の増殖を防ぐ働きがあり、人間の細胞には直接的に影響しないとされる。しかし、食品に付着している雑菌を制圧するくらいなら、私たちの腸内細菌も制圧するということになる。
もっとも腸内細菌も強いので、ソルビン酸に少々制圧されても、また増殖して元に戻る。それなら問題ないと思われるかもしれないが、そんなことはない。腸内細菌を元にもどすために身体には負担がかかっているのだ。
これは車にたとえるなら、アクセルとブレーキを同時に踏みながら走っているようなものである。腸に対して何十年も負荷を与え続ければ、当然、何らかの変質が起こる可能性も出てくるし、負荷を与えない状態に比べれば長持ちしないであろうことは容易に想像がつく。」
合成食品添加物(以下添加物と表記)をどう考えるかはひとそれぞれです。
自分の健康を気遣うよりも優先してしなければいけない、あるいはしたい事がある人、自分の健康の事など考えた事がないほど若くて精気に満ちあふれている人など、自分の健康を第一に考えて行動する人ばかりじゃないでしょう。そういう人であっても一応分かっていてもらいたいのは、食べ物にはブレーキになるものがあるという事。消化と解毒と両方しなければならないからです。
たとえ使用が許可されていて許容量以内の添加物でも、ブレーキになることには変わりありません。
「食物の分子はそのまま私たちの身体の分子になる。それゆえに、もし、食物の中に生物の構成分子以外のものが含まれていれば、私たちの動的平衡に負荷をかけることになる。それらを分解し、排除するために余分なエネルギーが必要となり、平衡状態の乱れを引き起こすからである。
食品を数日腐りにくくすることと、とりあえずの安全性だけを求めた食品添加物の使用は、生命活動を機械論的に捉える人間の部分的思考に基づくものにほかならない。」
著者は米ハーバード大学医学部で研究していた経験もある分子生物学者。専門は「消化」。その主張とは、私たちは「私たちが食べたもの」にすぎない。すべての生物は分子の「流れ」の中の「淀み」である。
私たちは食べたものが自分の身体になるということを知っています。でもそれは漠然とであって、それがどのくらいの時間をかけて入れ替わるものなのかをあまり考えません。著者は食べたものが食べた本体にかわるのにそんなに時間がかからないと言います。例えばネズミの全身の蛋白質は3日で半分が新しい蛋白質に入れ替わっていることが確認されていると。
私たちとが食べものの関係を、よくエンジンとガソリンの関係に例えますよね。
だけど著者は、私たちの身体のたんぱく質が常時アミノ酸に分解され、同時に再構築されていることを示します。私たちの身体はエンジンのように硬くいつまでも変わらずにあり続けるものとは程遠い感覚です。「生命とは代謝の持続的変化」であり、その代謝が行えなくなったとき死に至るのだということです。
すべての生物は分子の「流れ」の中の「淀み」にすぎないという時の「流れ」とは、ミクロ的にはこの代謝のことを指すのでしょう。そして動植物の代謝は水や空気やミネラルなどの環境をも取り込むわけですから、私たちの身体の中を環境が通り抜けているということになります。その中にあっての「淀み」が私たちであると。
この辺りの要約を以下のHPに見つけました。ご参考までに。
http://www.wound-treatment.jp/next/dokusho275.htm