9月 22, 2013 山地酪農, 店主コラム
     

○粗飼料=牧草、干し草、サイレージ(発酵させた干し草)
○濃厚飼料=トモウロコシ、大麦、小麦などの穀物類や、フスマ、米ヌカなど

ほとんどの酪農家が牛舎で牛を飼っている中、たいへん珍しい放牧で牛を飼っている方の牧場を、こないだ9/7に見学してきました。
放牧牛と舎飼いの牛の一番の違い、それは餌です。放牧牛の餌(ほぼすべて)が粗飼料なのに対し、 舎飼いの多くでは濃厚飼料と粗飼料の両方与えます。 濃厚飼料を与えると乳牛ならば乳量が倍増し、乳質も乳脂肪分が高くなるからです。 またサシが入った肉牛を育てるためにも、濃厚飼料は欠かせません。 牛にとって濃厚飼料は大変なごちそうであるらしく、それこそ目の色を変えて夢中になって食べるんだそうです。 だからといってこればかり食べさせるとエネルギの過剰摂取つまりメタボ状態になり、さまざまな病気の遠因となります。

ここで牛の胃袋の話を少々。哺乳類は(牛も)もともと草を消化できないんだそうです。セルロースの分解酵素を持ってないためなんです。 なのになぜ牛は草を食べるかと言えば、牛の4つの胃のうちの第一胃(ルーメン=成牛では150Lにも達する)に棲む微生物の中にセルロースの 分解酵素を持つものがいて、その微生物が分解してくれたものを吸収して栄養にすることができるからなんだそうで。 さらにそのルーメン微生物群が死ねば、それら菌体を構成していたタンパク質もまたアミノ酸として分解され吸収されてしまいます。 一粒で二度おいしいグリコみたいな(古過ぎ!)牛にとっては願ってもない共生関係なのですが、これは粗飼料が供給されていればこそ。 濃厚飼料が多くなって粗飼料の割合が減るとルーメンは異常発酵し、種々の障害が起きてしまうのだそうです。

「目の色を変え夢中になって食べたくなるものが自身にとっては有害」なぜこのようなことになったのかと考えれば、 ここに至る長い時間をかけた進化の歴史の中で、こんな風に穀物がふんだんに食べられる状況はありえなかったからなのでしょう。 牛の遺伝子にとってまったくの想定外であったわけです。食べるべきものを食べるのが一番よいのであって、牛にとってのそれは草だということ。

牛に濃厚飼料を与える理由は、もし乳脂肪が低ければミルクは引き取りを拒否されたり安くなったりするからで、 それによって起きる牛の病気は必要悪・職業病のように語られます。実際獣医さんのブログなど見れば、 濃厚飼料多投などが原因でおきる牛の第四胃変位整復手術(略して四変=よんぺん)は、ほとんどの診療所で毎日のように行われているとのこと。 つまりは構造的な問題なのであって、酪農家一人二人逆らってもどうなるものでもないのも現実です。 だからこそあの山地酪農の偉大さ貴重さが知れるのです。